• 障がいのある人もない人も まぜて焼いたらあらなかよし

こんにちは。まぜて 焼いたら あら、なかよし
クッキープロジェクトの趣旨に賛同し協賛してくださるのは、
CSR・社会貢献活動に熱心で先進的な企業ばかり!
そこで、シリーズでその取り組みをご紹介していきます。

今回は、さいたま市大宮区のパレスホテル大宮さん。
3月29日、同ホテルで開かれた
「福祉作業所のための焼き菓子の新商品開発と販路拡大に関する勉強会」に
取材させていただいた。
定員30名のところ想定を上回る申込があり、入れなかった団体も出るほどの人気の勉強会となった。


ホテルの製菓の厨房を見学 


まずは製菓の厨房見学からスタート。

同ホテル製菓料理長の伊東正弘シェフは、
「“一流ホテルだからといって、最新の最高の設備があるわけではない“という実態を見て知ってほしい。
逆によい設備があるからといっていいものがつくれるわけでもないですよね。」と話す。
食い入るように見つめる参加者から、「稼働時間は?」「温度管理は?」など次々質問が飛ぶ間にも、
パティシエさんたちが出入りし、テキパキと働き続けていた。
厨房で華麗に仕上がったお菓子はレストランやビュッフェで供される他、
ケーキショップ・パレスベーカリーでも販売される。
そのパレスベーカリーのある2階へ移動。
同ホテルでは、福祉作業所の販路開拓支援の一環として、
2008年より売店及びレストランのレジ横での販売に取り組んでいる。
厳選された季節の素材を生かした生菓子、こだわりの製法でつくられた焼き菓子などとともに、
福祉作業所でつくられたパウンドケーキやパンが並ぶ様子も拝見した。


美味しいお菓子を知ること


続いてメインの座学はレストランクラウンで行われた。
テーブルにはそのパウンドケーキやサブレ(紅茶・ショコラ)が並び、コーヒーもサーブされる。
「味に自信が持てなくて…」という作業所職員の質問に対し、
「美味しいものをつくるには美味しいものを知らないといけない。」と、
シチュエーションも含めて、あらかじめ用意された納得の解答だ。
同ホテルのシェフらは2007年以来、福祉作業所の求めに応じて、商品開発指導に県内随所を訪れてきた。

「代わり映えしないので新しい素材を使った商品をつくりたい」という相談は多いそう。
そんな時は、まず基本となる”プレーンクッキー”があるかを問う。
「しっかりとした基本があるからこそ、新作がつくれるということを理解してほしい。」と伊東シェフ。

実際、初めて福祉のクッキーと出会う「おかし屋マーブル」の来店者からよく聞かれるのは
「プレーンなのはどれですか?」というもの。
「基本のクッキー」は、つくる施設によって「サックリ」「しっとり」「香りがよい」など
食べ比べてみれば違いは一目(口)瞭然だ。

「要は、どういう味をつくりたいのか、自分たちの考えるクッキーとは何か、
“定義”を定めることをしてほしい、バリエーションは基本からです。」伊東シェフは語気を強める。


お菓子屋として・福祉職員としてのプロ意識を持って


「本当に変わりたいと思ったとき連絡をくれたら、いつでも相談にのります」毛塚智之料理長(左)。 日々試作を重ねる合間には作業所の指導に通う伊東正弘製菓料理長(右)。2018年3月のクッキーバザールではディスプレイを全面的に監修していただいた。

「自分の施設でつくった商品を300円で売っていたとして、お客さんに
『障がい者がつくっているんでしょ?100円にしてよ』と言われて、値引きしますか?」
毛塚智之料理長が参加者に問う。
「福祉作業所のクッキーは必ず売れます。
だからこそプロ意識をもち、商品の強みを知り、発信することをしてほしい。
仕事をするうえでのハンディがあれば、それを取り除いて、どうしたら仕事に参加できるか、を考える、
そうしてできたおいしいクッキーの物語を外に伝えることが職員の役割ではないですか。
それが、障がいのある人のやりがいにつながる。工賃の向上や、就労は後からついて来る。
そのことを意識できるかどうかだ。」
熱のこもった毛塚シェフの言葉に、受講者たちの面持ちがぐっと真剣になった。

ふだん当事者や支援者など福祉関係者の中だけにとどまっていると、
なかなか、お菓子屋としてのマインドを考える機会が薄れがちだ。
日々、利用者のケアに追われそうなってしまうのも、しかたのないことなのかもしれない。

けれど、そのことを重視するあまり、
利用者の「やりたい、のびたい」という気持ちをおろそかにしていないか。
おりしも、この2018年4月から、(よいか悪いかは一旦置いておいて)
障害福祉サービス等の報酬改定により施設運営に大きな影響が予想される。
職員の意識変革もせざるをえないとき、一つ背中を押して勇気づけられた人も少なくなかったことだろう。


焼き菓子コンテストでレベルアップ


今回、開業30周年を機に、地元に還元したいという思いで、初めて企画された講座だったが、
パレスホテル大宮の、福祉作業所を対象とした社会貢献の取組みは今に始まったわけではない。

2009年に始めた、福祉施設を対象にした焼き菓子コンテストは今年で9回目となる。
優勝した施設には、副賞として半年間、同ホテルが受託販売するほか、
同ホテルのパティシエが味の指導に1年間施設を訪問することが約束されるなど、
埼玉県内の福祉のクッキーの商品力向上に大きく貢献してきた。
2017年には、これらの取組が評価され、
第14回企業フィランソロピー大賞「インクルーシブスイーツ賞」が贈られた。

昨年の焼き菓子コンテストの様子。壇上では日頃作業している利用者が調理にあたっての工夫やおススメポイントを発表する。これまでの優勝者は着実に販路を拡大している。「勝ち負けじゃない、チャレンジする気持ちがモチベーションを高めるのです。」(毛塚シェフ)「やりきった笑顔がご褒美。新商品でなくても構わないのでぜひチャレンジしてほしい」(営業企画担当高橋さん)

パレスホテル大宮のシェフらとは、クッキープロジェクトが始まった2007年からのおつきあい。
シェフらの並々ならぬご支援もあり、埼玉の福祉のクッキーはとっても、
おいしく・かわいくなって「プレゼントしたくなるクッキー」へと進化を続けている。
これからもシェフらにお力添えいただきながら、
クッキープロジェクトも福祉のクッキーでまぜこぜを発信していきたい。

(レポート谷居早智世)

第9回焼き菓子コンテスト 2018年6月2日鐘塚公園で開催。(パレスホテル大宮に隣接している)
埼玉県セルプセンター協議会が主催するイベント「彩の国セルプまつり」内で公開審査会が行われ、
審査には食のプロだけでなく当日参加する一般来場者の声も反映される。
応募期間は4月1日〜5月14日 詳細はパレスホテル大宮募集案内ページ
問い合わせ先 パレスホテル大宮営業企画係 高橋さん TEL.048-647-5093 FAX.048-650-9091

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